1 朱い髪、紅い瞳、赤い血

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 少年に言われるがまま、OLは即座にその場から逃げ出した。  生きてこの場を離れられる幸運に感謝しながら。  獲物を横取りされる形になった獣人の方は、怒りと敵意を剥き出しにした。  そして、一声吠えると、いきなり少年に襲い掛かった。  一足飛びに少年の背後に迫った獣人が、長い鈎爪を少年の背中に突き立てる ・・・はずだった。  しかし、すでにそこに少年の姿はない。  少年は獣人が襲い掛かるのよりも速く、獣人の背後に回り込んでいたのだ。 一瞬の出来事だった。  文字通り目にも止まらぬ速さで、少年は獣人の突撃をかわし、いともたやすく獣人の後ろをとったのだ。  見た目は何の変哲もない少年だが、その動きは、人間どころかどの生物をも凌駕していると言って過言ではない。  現に彼の身体能力は、運動能力から五感のすべてに至るまで、人間をはるかに超越しているのだが、見た目からはそれを判別できない。  突如目の前の標的が消えたことで、獣人はその目をぎらつかせて少年の姿を探し求める。  そんな獣人に対して、少年は余裕たっぷりに声をかけた。 「おい。何もいきなり襲い掛かることはねぇだろ。こっちはそれなりにあんたを心配してやってるっつーのに。」  声を聞いた獣人は瞬時にその居場所を察知し、振り向きざま、またしても飛び掛かってくる。  しかし、その攻撃をまたしてもたやすくかわし、少年はセリフを続けた。 「だから落ち着けって。何もこっちは、あんたに危害を加えるつもりねぇから。」  だが、少年のそんな言葉も虚しく、獣人は遮二無二に襲い掛かってくる。  その猛攻をまるでダンスでも踊るように軽やかにかわし続ける少年が、ため息混じりにつぶやいた。 「はあ・・・完全に理性を失ってるな、コイツ。言葉も通じないか。こりゃ、クラスC以下だな。」  少年は獣人の存在について、何か知っているようだった。 「そうとなれば、俺にできることはひとつだけ・・・」  少年は「もうゲームに飽きた」と言わんばかりに、急に動きを止めた。  その隙を逃さず獣人が襲い掛かる。  口を大きく開き、少年の喉に噛み付こうとした。  だが、少年の方が獣人より一枚上手だった。  まるで獣人の動きを読んでいたかのようにその牙をかわすと、カウンターの蹴りを腹部にみまった。  獣人は派手にふっ飛び、そのまま2、3度地面を転がった。
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