香坂 光

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毎朝、満員電車に揺られて押し潰されながら会社に向かう。 それは社会の中にごく普通に存在するサラリーマンの姿だろう。 しかし、その中に信頼していた上司に性行為を強要されている人は果たして何人いるだろうか… それも1年近くも耐えながら… 恐らく、僕くらいだろう。 僕はいたって普通の人間だ。どちらかと言えばあまり目立たない方だと思う。 意見もあまりはっきり言う方ではないし、良い成績を残しているわけでもなく、ごく普通の平均的な人間だ。 そんな僕がなぜこんな目に遭わなければならないのだろう バチが当たるような悪さもしたことがない。 どちらかと言えば、何かと誰かに貢献している側だと思うのに… どうして… 何かが歪みはじめてから一度も消えないその言葉… そして、その答えも見つからないまま過ぎていく時間。 何度も何度も僕は彼から逃げだした。逃げなければ僕が死んでしまう。 だが、その度に罠を仕掛けられて彼の元に戻される。そして心をズタズタに傷つけるお仕置きという名の性行為。 逃げては捕まり逃げては捕まり… それを繰り返していくうちに逃げることを諦めた。その時、僕はもう疲れていたんだ。 何もかも色褪せて見えるこの世界で生きていくことも、ただボロボロに傷つけられる性行為にも…
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