ミッション

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「一旦、端の方に行こ…」 ショウがアキラの方に振り返ると、アキラは女性と社交ダンスをしていた。 ――何してんだアイツ! 「一緒に踊ってくれませんか?」 「申し訳ないですが、今はちょっと…」 女性に誘われたが、ショウは丁重に断った。 そして、1歩後ろに下がった瞬間、 ドンッ 「きゃっ」 後ろにいた女性に当たってしまった。 女性はよろけた後、テーブルにぶつかった。 その振動でテーブルにあったグラスが倒れ、中の飲み物が女性のドレスにかかる。 「申し訳ない!」 ショウは慌ててポケットから出したハンカチで、女性のドレスの裾をトントンと叩いた。 「気にしないでください。 …そのハンカチ、ブランドのものですよね?汚れちゃいます。」 女性はショウの手を止めると、顔を上げた。 ――この顔、確か情報屋から貰った資料に載ってた、社長の妻だ。 それにしても、なんだこの人の目は。 まるで、助けを求めているかのよう… 女性は会釈をし、人混みの中に消えていった。 「とにかく、アキラを連れ戻さないとな。」 ショウはアキラに歩みより、肩を叩いた。 「ナンパはそれぐらいにしとけ。」 「違う!これは社交辞令だ!」 踊っていた女性は2人のやりとりにクスクスと笑い、アキラに会釈をした。 「楽しい踊りをありがとう。」 「いえいえ、こちらこそ。」 ショウは端の方にアキラを連れてくると、微笑んでいた顔を元に戻した。 「おまえ何やってんだよ。」 「断れなくて、つい。」 頭を掻くアキラに、ショウは溜め息をついた。 「本題に入るぞ。」 「おぅ。」 パーティー会場から離れていく2人を見て、社長は笑みを浮かべた。 「本当のパーティーの幕開けだ。」
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