第二十一章

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「おい、谷口、午後からの会議で来期の内示が出るらしいぜ。」 「俺は異動はないよ。 戻ってきたばかりだしな。」 四月の新年度に備えて早めの異動の内示がある関係で、毎年この時期になると皆そわそわし始める。 そして此処にもそのひとりがいる。 「主任になりてーなぁ。」 中村がため息まじりに言った。 「俺達はまだ可能性は低いだろうな。」 「谷口はそんなことないさ。」 「何で?」 「だって、入社半年で海外。 立ち上げがうまくいって、呼び戻されて今じゃここのエースだもんな。」 「世の中そんなに甘くないさ。」 確かに、サラリーマンとしては出世してある程度までは昇っていきたいと思う。 確固たる地位を手に入れて、彼女の心も俺のものにできれば。 なんて上手くいかないか。
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