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いつの間にか、富沢さんは遥か彼方の席で騒いでいるようだった。
少し飲み過ぎたかな。
私の周りは皆がかなり強いらしく、そう弱くない私でも飲み過ぎた感じがする。
明日の事を考えて、セーブしなきゃ。
これから帰って、少しだけ荷造りしなきゃいけないし。
気分を入れ替える為に化粧室へ行くことにした。
会場を出ようとした時、私とは逆に中へ入ろうとした常務とぶつかりそうになった。
「申し訳ありません。
失礼いたしました。」
「いや、こちらこそ失礼しました。」
頭を下げ、その場を去ろうとした時、
「森下さん、お父上はお元気ですか?」
「父をご存知でいらっしゃるのですか?」
突然、父の話題で呼び止められた。
「先日、とある会合で同席させていただいたのですよ。
その時に娘がお世話になっていると仰られましてね。」
「父がそんな事を。」
「お父上はとてもご立派な方ですよ。我々のような者には、道しるべとなるようなお方ですから。
そんな方でもやはり娘は可愛いものなんですね。」
常務の話す父の事が、他人事のようにしか聞こえなかった。
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