第二十四章

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いつの間にか、富沢さんは遥か彼方の席で騒いでいるようだった。 少し飲み過ぎたかな。 私の周りは皆がかなり強いらしく、そう弱くない私でも飲み過ぎた感じがする。 明日の事を考えて、セーブしなきゃ。 これから帰って、少しだけ荷造りしなきゃいけないし。 気分を入れ替える為に化粧室へ行くことにした。 会場を出ようとした時、私とは逆に中へ入ろうとした常務とぶつかりそうになった。 「申し訳ありません。 失礼いたしました。」 「いや、こちらこそ失礼しました。」 頭を下げ、その場を去ろうとした時、 「森下さん、お父上はお元気ですか?」 「父をご存知でいらっしゃるのですか?」 突然、父の話題で呼び止められた。 「先日、とある会合で同席させていただいたのですよ。 その時に娘がお世話になっていると仰られましてね。」 「父がそんな事を。」 「お父上はとてもご立派な方ですよ。我々のような者には、道しるべとなるようなお方ですから。 そんな方でもやはり娘は可愛いものなんですね。」 常務の話す父の事が、他人事のようにしか聞こえなかった。
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