4130人が本棚に入れています
本棚に追加
『お父上はご立派な方ですよ』
常務の言葉が頭の中を回る。
久しぶりに父の凄さを耳にした。
それも同じ会社の人から。
父を知った人は皆同じような事を言う。
「どうしたの?
ぼーっとしちゃって。」
気がつくと、遥か彼方に居たはずの富沢さんが隣に座っていた。
「酔った?」
「ううん、大丈夫。」
「そういえば、さっき伊藤さんと話してたでしょう?
気をつけてよ。」
「何が?」
「森下さんの事、聞いてるみたいだから。」
「聞いてるって?」
「興味を持たれたって事。」
「同じ本社になるからでしょう。」
「だから余計に心配なわけ。」
「大丈夫よ。」
「何だかアイツ、気に入らないんだ。
涼しい顔してるけど、腹の中はきっと真っ黒だよ。」
「ちょっと、それ言い過ぎ。」
富沢さんが言うほど、腹黒いかどうかはわからないけど、あまり関わりたくはないと思った。
.
最初のコメントを投稿しよう!