第二十四章

20/24
前へ
/525ページ
次へ
『お父上はご立派な方ですよ』 常務の言葉が頭の中を回る。 久しぶりに父の凄さを耳にした。 それも同じ会社の人から。 父を知った人は皆同じような事を言う。 「どうしたの? ぼーっとしちゃって。」 気がつくと、遥か彼方に居たはずの富沢さんが隣に座っていた。 「酔った?」 「ううん、大丈夫。」 「そういえば、さっき伊藤さんと話してたでしょう? 気をつけてよ。」 「何が?」 「森下さんの事、聞いてるみたいだから。」 「聞いてるって?」 「興味を持たれたって事。」 「同じ本社になるからでしょう。」 「だから余計に心配なわけ。」 「大丈夫よ。」 「何だかアイツ、気に入らないんだ。 涼しい顔してるけど、腹の中はきっと真っ黒だよ。」 「ちょっと、それ言い過ぎ。」 富沢さんが言うほど、腹黒いかどうかはわからないけど、あまり関わりたくはないと思った。 .
/525ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4130人が本棚に入れています
本棚に追加