第二十四章

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「じゃあ、私はここで帰るね。」 「わかったー。 落ち着いたら、時間作ってウチへ遊びに来てね。 旦那が喜ぶからさ。」 「うん、ありがとう。 あまり飲み過ぎないでね。」 「りょーかいっ。」 もう、富沢さんはこの時点でかなり酔ってる。 一次会で帰ろうと言ってみたけど、二次会に行くって言うし。 大丈夫かな? 彼女がちょっと心配だったけど、二次会へと繰り出して行く人達と離れて駅へと急いだ。 「森下さんっ。」 それは先を急ぐ私に突然向けられた。 かなり大きな声で誰かが私を呼んでいる。 いったい誰? 声を思い出そうとしても浮かんで来ない。 「森下さんっ。」 もう一度聞こえてきた。 はぁ・・・とため息をつき振り返ってみると、 声の主、伊藤さんが走って来るのが見えた。 「あー、追い付いた。 案外歩くの早いですね。」 「何か私に用事でも?」 伊藤さんと同じ方向から歩いて来た人々が、私達を見ながら通り過ぎていく。 もう、恥ずかしい・・・。 「二次会行かないんですか?」 「はい。」 「僕、明日大阪に帰るんですけど、帰る前に昼飯でも食べませんか?」 えっ?何? 「ごめんなさい。明日は用事があるんです。」 何なの、この人・・・。 「残念だな。 でも来週末にはこっちに引っ越ししてきますから、その時にでもご一緒しましょう。」 「・・・・・・。」 ホントに何なの、この人。 「では、また近いうちに。」 そう言って、くるりと踵を返して今来た方向へ戻っていった。 「何なの。」
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