第二十五章

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駅に隣接するデパートの中にある蕎麦屋に落ち着いた。 家に戻る時間がもったいなくて、別の階で必要な物も買った。 あとは食事を済ませて、早く二人きりになるだけだ。 そして、 切り出した。 「どうして迎えに来てくれたんですか?」 俺の質問に、彼女は啜っていたお茶を置き、真っ直ぐ俺を見る。 「引っ越ししたの。」 「引っ越し? いつ?もしかして、今日?」 「そう。 今日したの。」 「えっ、でも、昨日そんな事言ってなかったですよね。」 荷造りしている様子だってなかった。 いったい、どうやって・・・。 「仕事の方で研修があったり、他にも色々と忙しいのがわかっていたから、業者に全て任せたの。 もし、事前に話したら手伝うって言われると思ったから。 涼くんだって忙しいのにそんな事させられないでしょう。 誰にも煩わせることなく済ませたかったの。」 「そうだったんですか。」 「ごめんなさい、黙っていて。」 「いいんです。 こうして、今ちゃんと話してくれたし。」 とはいっても、どこか虚しかった。 まだ頼られていないという事を実感させられた。
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