第二十六章

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それにしてもすごい。 海斗が持ってきた荷物は色々な物であふれている。 「お赤飯のおにぎり。」 「引っ越し赤飯だってよ。」 「あー、ハチミツしょうがもある。」 「もう無いだろうからってさ。」 私の好きなものを揃えてくれた母に感謝の気持ちでいっぱいだ。 「可愛い娘の為に、至れり尽くせりなのはいいけど、持ってくる俺の身も少しは考えて欲しいよな。 車じゃないからって何度も言ったんだけど、あれもこれもって、結果的にこんなだよ。」 「ほんと、ありがとうね。」 重い荷物を持って来てくれた海斗に感謝すると同時に、もうひとつの荷物を見て不思議に思った。 「ねぇ、何でスーツがあるの?」 「あぁ、これ? 明日ここから出勤しようかと思ってさ。」 「へっ?」 間抜けな返事をしてしまった。 想像もつかない答えだったから。 「こっちに着くのは、頃良い時間だと思ったからさ。 また帰るのも面倒じゃん。 ここの方が会社に近いし。 月菜が許してくれたら、の話だけど。 ダメだったらビジネスホテルにでも泊まるからいいよ。」 無下に追い出すほど、私は鬼にはなれない…。 「いいよ。」 「そう言うと思った。」 .
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