第二十六章

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お赤飯のおにぎりは格別だった。 豆が口の中で踊っている。 ごま塩をきちんとラップに包んで持たせるなんて、母の愛を感じずにはいられなかった。 みんな私を甘やかしてくれる。 海斗もそのうちのひとり。 何も言いだせない私に付き合って、同じようにお赤飯のおにぎりを食べている。 「気を遣わせてごめんね。 大丈夫だから。」 「そうか・・・。」 「引っ越しやら何やらで、ちょっと疲れていたのかも。」 「ふーん。 その何やらって何?」 あ・・・、 突っ込みどころを自分で作ってしまった。 「それは、 言葉のあや。 そう、あや。言葉のあや。」 「連呼しなくてもいいよ。」 うっ・・・・・・。 何を言っても適わない。 「言いたくなった時に、聞くからさ。」 「うん、ごめんね。」 思わず言ってしまいそうになったけれど、こうして海斗が心配してくれるだけでだいぶ救われた気がする。 そして・・・零れそうになっていた涙も、いつの間にか乾いていた。
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