第二十六章

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軽く深呼吸をした。 「彼がたまたま年下だっただけ。」 「俺にも、 チャンスはあるって事ですよね。」 「チャンスって・・・」 「でも今は、 まだ機は熟していないので我慢しますけど。」 初めて見る表情だった。 瞳が光るというのは、今の彼のような眼を言うんだと思う。 彼が入社してから3年。 男性として意識した瞬間だった。 もう一度背筋を伸ばして、 「もっと他にしなければならない事があると思うんだけどな。 前にも言ったけど、先ず私と同じステージまで上ってきて。 脇本さんはそれだけの実力があるんだから。」 「まずは、追い付いたらって・・・ですか。そこまで行かないとダメっていう事ですよね。 男として見てさえもらえない。 ・・・森下さんはいつも厳しいな。」 「私にとって、脇本さんは大事な後輩だから。」 「後輩か・・・。 そうですよね。 俺と森下さんは仲の良い先輩後輩なんですよね。」 「それだけじゃないけど。 脇本さんとは固い信頼関係で繋がってると私は思ってる。」 「うまくかわされたな。」 先ほどまで放っていた光は消え、いつもの穏やかな瞳に戻っていた。
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