第二十六章

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「もしもし・・・。」 「あっ、涼です。」 「こんばんは。」 「こんばんは。今、話しても平気ですか?」 その声色はいつもと違って、トーンの低いものだった。 「大丈夫。」 「もしかして、出先ですか?」 「ううん、家にいるけど。 涼くんは?」 「俺は今駅に着いたところです。」 「さっき電話くれたのに、出られなくてごめんなさい。」 小さな罪悪感から出た言葉だった。 「いいんです。 会社を出た時に架けたので。 タイミングが合わなかったんですね。 ・・・月菜さん、今週はいつ逢えますか?」 逢って、この際ささくれた心を曝け出してしまった方が楽になれるかもしれない。 「今週、平日は仕事が忙しくてちょっと時間が取れないの。 土日でもいいかな?」 金曜日は送別会がある。 「わかりました。 土日に予定します。 月菜さん、疲れてますか?何だか声が擦れているみたいですけど・・・」 「大丈夫よ。 心配してくれてありがとう。」 私と違って涼くんはどこまでも優しい。
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