第一章

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いつもの大型書店。 気になる本が取りたくて、さっきから手を伸ばして爪先立ちをしているのに全然届かない。 あともうちょっとで触れられるはずなのに。 「もう・・・、つかれた。」 思わず口から出てしまった。 こんなこと言うなんて我ながら恥ずかしいけど、本当だから仕方ない。 前から気になっていた風景写真集。 表紙だけでも見たくて手にしたかったのに届かない・・・。 もう一度並べられている棚を見上げてみる。 出そうになった溜息を飲み込み、その場から離れた。 私の名前は『森下 月菜』 30歳、独身。 目立たぬように、ごく普通に、と願う毎日。 でも、その小さな願いがひとりの男性との出会いで叶わぬものとなるのをこの時は知る由もなかった。
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