第二十六章

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固唾を飲んで皆、所長の言葉を待っていた。 「森下主任は、能ある鷹は爪をかくすという言葉通りの人。 そして、並みはずれた洞察力の持ち主でもあるのはみんなも知ってると思う。 これからどれだけの変革がされるのか、楽しみにしているから頑張って欲しい。」 更に続く言葉を聞き逃さないように、しーんと静まりかえっていた。 「以上。」 えっ? ほんとにそれで終わり? 「所長、それだけですか?」 脇本さんが静寂を破って聞いた。 「当たり前だろ。 あとは最後の日に直接言うんだよ。 そんな簡単にみんなに聞かせられないよ。」 いつもの所長に戻っていた。 阿部所長の部下になって四年。 その間に主任になり、今回マネージャーになった。 部長が言っていたことがある。 阿部所長の下で仕事ができた事を良かったと思う時は、離れる時だと。 今、その言葉の意味を実感できる。 上司だけじゃなく、支店のみんなに恵まれて私は幸せ者だ。
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