第二十六章

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「いらっしゃい。」 「お邪魔します。」 一週間ぶりに見る涼くんは心なしか緊張しているようだった。 「今、温かいもの淹れるね。 コーヒーでいいかな?」 「はい、お願いします。」 昨夜のメールで、ゆっくり話をしたいと返事をした。 そして、涼くんが私の部屋に来てくれることになった。 「どうぞ。」 「ありがとうございます。 これって・・・。」 「うん、涼くんが買ってくれたカップ。 今日、初めて使うの。」 「それじゃ、次は俺ん家にあるカップを使わないとですね。」 少しだけ笑顔になった。 「今週は忙しかったんですよね?」 「うん、毎日フーフー言ってたかな。」 笑って言ったつもりが、顔が引きつっているような気がする・・・。 「昨夜、夕飯に誘おうかと思ったんですけど、月菜さん忙しいって言ってから止めました。」 「・・・実は昨日、送別会だったの。」 「そうだったんですか。」 「黙っててごめんね。」 「別に謝ることなんてないですよ。 それとも、何か謝らないといけないことでも?」 「ない、そんな事ない。」 「それならいいですよ。」 他愛ない会話が続く。 早いうちに話をしないと。 正座をして姿勢を正した。 「涼くん、 聞いてほしいことがあるの。」
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