第二十六章

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「私・・・、森下の家の本当の子供じゃないの。 ・・・養女なの。」 言った瞬間に涼くんの目が驚きをみせる。 誰だって、いきなりこんな事言われたら反応に困るよね・・・。 明らかに動揺しているのがわかる。 重い話だと前置きしてはいたけれど、彼にとってはかなり衝撃的な話なんだと思う。 「私を生んでくれた母親は、私が1歳半の時に亡くなったらしいの。 それで実の父親は、シングルファーザーとして私と二人で生活していたんだけど、その父親も三歳の時に事故で亡くなったって・・・」 「・・・・・・。」 私の話を聞き、何も言葉が出ない涼くんを前に更に続けた。 「一人になった私を父親の親友だった森下の父が自分たちの子供として養女に迎え入れたの。 色々なしがらみや、問題もたくさんあって本当に大変だったみたいだけど・・・ 私ね、高校を卒業するまで知らなかった。全く気がつかないまま、育ったのね。 たくさんの愛情を注がれて育ったの。 血液型も森下の母親と同じだったし、まさかそんな事実があるなんて思いもしないじゃない。 森下の両親から高校卒業と同時に聞かされた時、不思議なくらい自然と受け入れていたんだ。 自分でも驚くほど冷静だったのを覚えてるんだ・・・。」 ぽたりと涙が落ちた。 あれ? 泣くつもりなんてないのに。 「月菜さん。」 悲しそうな声で涼くんが私を呼んだ。
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