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「月菜さん、俺の話を聞いてくれますか?」
「うん。」
ようやく震えが止まった彼女と向かい合わせるように座り直した。
「覚えてますか?
高校生だった俺に、未来を考える前に現在(いま)を全力疾走した方がいいんじゃないの。ってちょっとカッコいいことを言ったんですよ。」
「私そんなこと言ったんだ・・・。
もしかすると自分自身に言い聞かせていたのかもね・・・。」
「でも、カッコいいこと言う割にはどこか遠いところを見ているような目をしてた。
その時から、月菜さんに惹かれていたんだ。
それで・・・
数年ぶりに見かけたと思ったら、今度は淋しそうな目をしてた。」
「そう・・・。」
「付き合ってからも、かな。
月菜さんの心を手に入れるのは正直難しいと思ってた。
手の届かないところにいるような感じで。
高くて厚い壁が立ちはだかっているような気がして。
でも、何度でも壁を壊してみせる。
立ちはだかる物を全て壊してみせる。
そう思い続けていたら、ようやく願いが叶った。
月菜さんがこうして曝け出してぶつかってきてくれた。
ありがとう。
やっと・・・心に触れることができた。」
「・・・・・・。」
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