第二十七章

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乾杯が終わり、皆それぞれに飲み始めていた。 俺達のテーブルでも、中村が秋葉に毒突かれながら場を盛り上げている。 「ほら、恵美ちゃんも飲んで。」 コイツは本当に目配り気配りの利く男だ。 俺にはできない。 中村にビールを酌された経理部の彼女が口を開いた。 「あの・・・、谷口さん。聞いてもいいですか?」 「どうぞ。」 「谷口さんって・・・、彼女いるんですか?」 「いますよ。」 見た様子からすると、きっと誰かに聞いてくるようにでも言われたんだろう。 「その話、私もちょっと興味あるな。」 珍しく秋葉が反応する。 「社内じゃないよね?」 「あぁ。」 「俺、知ってるよ。会ったし、一緒に食事もしたし。」 「それは偶然だろ。」 そうだった、中村は会っていたんだ。 「きっと、谷口の方がぞっこんなんでしょうね。 冷徹な男にそんなやわらかい表情をさせる人なんだから。」 「あぁ。 一生、命懸けで守りたい人だよ。 結婚もするしな。」 「えっ?」 「えーっ?」 中村と秋葉が同時に驚く。
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