第二十九章

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「ごちそうさまでした。 美味しかった。」 「月菜さんの選択は、バッチリでしたね。 また来ましょう。」 「そうね。 動物園に限らず色々なところに行こう。」 あっ、まただ。 ふと発する言葉は、俺に小さな喜びをもたらしてくれる。 今日、明日と次への約束がひとつひとつ重ねられていく。 俺達に社交辞令は必要ない。 心で思っていることが、そのまま言葉に表れたと信じている。 嬉しくてガッツポーズをしそうになった。 少し前にようやく見えだした晴れ間が、雲一つ無い晴天に変わっていくのがわかった。 「でも、私ってスポーツとか全然しないし、 どちらかと言えばのんびりして過ごす方が多いから、涼くんがつまらなく感じているかなって思ったりしてる。」 「俺も社会人になってからは、ゆっくりする方が多いですよ。 今は、こうして月菜さんと同じものを見て、感じて、一緒に過ごせることが元気の源になってるんです。 つまらないなんて一度も思ったことなんてないです。」 月菜さん、 今の俺にとって、あなたがすべてと言ってもいいくらいなんだよ。 だから俺だけを見て。
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