第二十九章

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本屋での彼女は、まるでオモチャを前にした子供のように生き生きとして、あれやこれやと手に取り、結局7冊も買った。 今回、俺の出番はなく、ただ後から付いて歩くだけになっていた。 「ちょっと買いすぎちゃったかな。」 はぁ…、 そんなに嬉しそうな顔しないでほしい。 そして、駅前のスーパーへようやく着いた。 「うーん、迷うな。」 「何でもいいからね。 って言っても、私が作れるものになっちゃうけど…。」 カートを押す俺の隣で、食材を眺めて歩く彼女を見て浮かんだ。 「親子丼が食べたいです。」 「親子丼? それでいいの?」 「はい。 あと味噌汁があれば、もうそれだけで十分です。」 俺が簡単なものを望んだからか、拍子抜けしたような顔をしている。 「それじゃ、あと何か野菜のおひたしでも付けよっか。」 「はい。」 今にも腹の虫が鳴きだしそうな気配がしてきた。 .
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