第二十九章

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買い物を終えて彼女の家へ帰ってきた。 ふたりきりの空間・・・。 「喉渇いたでしょう。 温かいのと冷たいの、どっちがいい?」 買ってきた物を冷蔵庫に入れながら、彼女が聞いてきた。 俺はというと、7冊の本と並んで部屋の真ん中に座っている。 「冷たいのがいいです。」 「わかった。 じゃ、アイスコーヒー作るね。」 せっかく帰ってきたのに、なかなかゆっくりできそうにない。 「月菜さん、ちょっといいですか?」 「ん? どうかした?」 キッチンでコーヒーメーカーをセットし終えた彼女を、部屋へ呼んだ。 「充電です。 朝の充電だけじゃ足りなくて。」 「涼くん・・・。」 膝立ちしている彼女の胸元に顔を近づけると、ほんのりと甘い香りがする。 俺の頭に手が触れ、 そして、優しく撫でるのがわかった。 「今週、ずっと我慢してたから。」 「うん。」 「本当は毎日でもいいくらい、声も聞きたかったし、逢いたかった。 でも我慢してた。 だから、明日はずっとふたりきりで過ごしたい。」 「うん。」 気が付けば、部屋中にコーヒーの香りが漂っていた。
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