第三十章

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「本当に私なんかでいいのかなって思って。 コンプレックスの塊な私と違って、彼は誰もが目を奪われるくらい素敵な人だし、5歳も下だし・・・。 こんな私が隣にいるなんて・・・。 他にもっとお似合いの人がいるはず。 そんな彼の世界を奪ってしまっていいのかな。」 富沢さんは黙っていた。 「そんな思いもあって、素直になれない自分がいるの。 甘えたくても甘えられない。 私がそんな感じだから、彼も私に甘えたりできない。 でもね、全身でぶつかってくるの。 怖いくらいに。 その度に足踏みばかりしていないで一歩前進しないと。って思う。 そうじゃないと幸せになれないよね。」 一気に言い切り、残り少なくなったビールを飲み干した。 「それだけわかっていれば十分でしょう? 彼に委ねてみたら? 時には理性じゃなくて、本能のままに動いてみるのもアリだよ。」 そう言うと、富沢さんは焼き鳥に手を伸ばして頬張った。
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