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「これ、月菜さんの好きなケーキです。」
玄関に入った涼くんの第一声。
「ありがとう。」
「本当に嬉しそうな顔しますね。
俺もその顔が見たくて買ってきたりするんですけど。」
買ってきてくれたケーキの箱を私に手渡して、靴を脱ぎ始めた。
そんな何でもない仕草のひとつひとつが、この部屋に慣れてきたことを感じさせる。
右足、そして左足の靴を脱ぎながらの少し前屈みになった体勢でのキス。
それは、唇が軽く触れる程度の優しいもの。
「逃げないと、このまま襲っちゃいますけど。」
「そんなことしたら、ケーキが潰れちゃう。」
不意打ちに一瞬固まってしまった私に、いたずらっ子のような笑顔で言う涼くん。
ほんと、この笑顔は危険。
今更ながら恥ずかしがることでもないのに、ちょっとだけドキドキしてしまった。
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