第三十章

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起き上がってから一度、強く抱きしめられた腕が解かれた。 そして目の前には正座をした涼くんがいる。 いつになく真剣な顔。 「それじゃ話してください。」 「そう改まって言われると、何だか言葉が出てこない・・・かも。」 「そんなこと言わないで。 ゆっくりでいいから聞かせてください。」 「うん。」 こういう時の涼くんは、なんともいえない雰囲気を漂わす。 その雰囲気には抵抗できない。 「一緒に暮らす?」 ハハハ・・・。 なーんだ、スルッと言えたじゃない。 緊張なんてしないじゃない。 「月菜さん。本当にいいんですか?」 「うん。ごめんなさい、遅くなって。 将来を約束したのに私の都合で一緒に住まないなんて我儘すぎる。 前進どころか同じ場所でぐるぐる回っているだけだもの。」 ほんと、降参です。 というより、知らず知らずのうちに人肌のぬくもりを求めているのかもしれない。 「ヤバい・・・、俺、涙出そう。」 優しく笑う涼くんが愛おしくなった。
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