第三十一章

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「鎌倉の家には、土曜日に行くって事で。」 「うん。」 俺のリクエストで、夕飯はパスタにしてもらった。 レパートリーが少ないと言いながら、彼女はサクッと仕上げる。 そして必ず、味の保証はできないけどねと付け加えて照れ隠しする。 「もう、今から緊張しそう。」 「高校生の頃から何度会ってても、やっぱり違うものなのかな。」 「全然違いますよ。」 「大丈夫だよ。」 片づけを終え、向かいに座ろうとしたのを半ば強引に隣へ引き寄せ、彼女を囲うように落ち着いた。 「本当は明日からでも一緒に暮らしたいけど、きちんとするところは決めないといけないと思って。」 「そうね。」 引き寄せた腕に少し力を入れ、彼女を抱きしめる。 最初は強張っていた身体も、心なしか緩んできた。 遠慮がちに委ねてくれるのが、堪らなく嬉しい。 「コーヒー淹れる? それともワインでも飲む?」 「今は大丈夫です。 さっき、シャンパン飲んだし、それよりもこうしてゆっくりしていたい。」 このまま眠ってしまいそうなほど、とても心地良かった。
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