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夕方の駅前通りは混んでいた。
右側を歩く彼女に気を配りながら先に進む。
そろそろいいかと思い、そっと手を繋いでみた。
俺の方を見はしないが拒否する様子もない。
「この左手の薬指に早く着けたいです。
土曜日は鎌倉だから、日曜日に見に行きませんか?」
虫除けの意味合いもあるが、何よりも俺が安心したい。
こんなにも欲張りだったのかと、今更ながら思う。
「いいの?」
「もちろん。」
窺うような表情から笑顔に変わった。
こっちにまで嬉しさが伝わってくる。
改札が見えたところで、繋いでいた手を離す。
何だか今日は離れがたい気持ちがいつも以上に強かった。
でも我慢するしかない。
「それじゃ、また。
メールしますね。
あと、帰ったら電話します。」
「うん、待ってる。」
改札を抜けて後ろを振り返ると、笑顔で手を振る彼女がいた。
こうして見送ってもらうのも悪くないな。
そんな風に思いながら俺も手を振った。
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