第三十一章

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5年後。 俺は海外勤務から本社に呼び戻された。 希望が叶い、逃げるように日本を出てから一度も戻らなかった。 というより、・・・戻れなかった。 海外赴任最長期限が5年でなければ、こうして戻ることもなかったはず。 辞令に従い帰ってきた。 俺の左手薬指には今でも指輪がはまったまま。 もちろん外すつもりもない。 俺は今、生きている。 朝が来て、夜が来て、 腹が減れば食べる。 眠くなれば寝る。 不思議なくらい、同じようなリズムで毎日が過ぎていった。 何も考えたくなかった。 仕事さえしていれば余計な事に気を取られずに済んだ。 おかげで今じゃ仕事中毒と言われていた。 こんな俺をアイツは笑うだろうか。 左手に力を込め、まずは会わなければならない人物へ連絡を取った。
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