第三十一章

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「俺、ちょっと本堂行って住職に挨拶してくるわ。」 一人であらかたの事を終えたところで、海斗が言った。 「あぁ。」 気が抜けたようにただ立ち尽くしている俺を見て、奴なりの気遣いだろう。 有り難かった。 「時間、気にしないでいいからさ。」 「・・・・・・わかった。」 ひとりになって、先ず線香に火をつけた。 心は落ち着いていたはずなのに、 いざこの場所へ来てみると、5年前のあの笑顔、別れ際の彼女の姿が鮮明に浮かんでくる。 思い出さないようにしていたのに・・・ どうしようもなく悲しくなり、堪えられずに涙だけじゃなく声を出して泣いた。
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