第三十一章

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どれくらい経っただろう。 そう長くはない人生の中で、こんなに泣いたのは初めてだ。 あの時には流せなかった涙。 身体の水分が涸れてしまうのではないかと思うほど、溢れて止まらなかった。 ・・・・・・もう泣くのはよそう。 これが最初で最後だ。 ねえ、月菜さん。 俺もあなたと同じレベルまで立つ事ができたんだよ。 すごいね。って褒めてくれる? 仕事中毒って言われても、他の事は何も考えずに突っ走ってきたんだ。 っていうか、考えたくなかったんだけどね。 あなたがいない場所から逃げ出したあの頃の俺は弱かったな。 本当だったら、あなたと子供三人くらい余裕で養うはずだったのに・・・・・・ きっとあなたは子供に負けないくらい可愛いママなんだろうね。 俺は家族を守る強いオヤジになれたかな。 でも、 あなたは俺には見えない羽根を纏っていたみたいで、手の届かないところまで独りでいってしまった。 ずっと一緒だと思ってたんだけどな。 ほら、おじいさんとおばあさんになるまで。って約束したよね?覚えてる? ねえ、月菜さん、聞こえてる? 彼女へ届くことのない想いを巡らせた。             ー終ー
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