4129人が本棚に入れています
本棚に追加
/525ページ
どれくらい経っただろう。
そう長くはない人生の中で、こんなに泣いたのは初めてだ。
あの時には流せなかった涙。
身体の水分が涸れてしまうのではないかと思うほど、溢れて止まらなかった。
・・・・・・もう泣くのはよそう。
これが最初で最後だ。
ねえ、月菜さん。
俺もあなたと同じレベルまで立つ事ができたんだよ。
すごいね。って褒めてくれる?
仕事中毒って言われても、他の事は何も考えずに突っ走ってきたんだ。
っていうか、考えたくなかったんだけどね。
あなたがいない場所から逃げ出したあの頃の俺は弱かったな。
本当だったら、あなたと子供三人くらい余裕で養うはずだったのに・・・・・・
きっとあなたは子供に負けないくらい可愛いママなんだろうね。
俺は家族を守る強いオヤジになれたかな。
でも、
あなたは俺には見えない羽根を纏っていたみたいで、手の届かないところまで独りでいってしまった。
ずっと一緒だと思ってたんだけどな。
ほら、おじいさんとおばあさんになるまで。って約束したよね?覚えてる?
ねえ、月菜さん、聞こえてる?
彼女へ届くことのない想いを巡らせた。
ー終ー
最初のコメントを投稿しよう!