粉雪

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君を思い出す度に胸は痛み、言葉では表現出来ない程の感情が沸き起こる 君の笑顔が見たいから、僕は傍に居ようと誓ったのに… 今となっては叶わぬ願いを、ただ静かに眠る君を心に焼き付けた 粉雪の舞う季節になって、再び思い出すのだろう… 雪よ!雑音と共に、消したい過去さえも奪い去って行くがいい… 僕は感情を「無」にして、降り積もる雪をただ眺めていた 静まり返る真夜中の空は、灰色のベールの彼方にあの人を奪い去った 君が大好きだった冬の季節が、僕はまだ好きになれないでいるよ 粉雪が舞い散る空を眺め、君に出会えた奇跡に心震えた記憶が蘇る ああ…心は正直なもので、この季節だけは嫌いになれないと心が呟く 掌に舞い散る雪を集め、静かに抱き締めた… 君の笑顔が、君の温もりさえもがリアルに蘇る まるで、私を忘れないでと言った君の涙のように…。 最後に聞いた「ありがとう」の言葉と共に 氷点下の肺を刺す痛みさえもが愛おしくて…。 僕の体を包む灰色の世界が、僕と君との愛の証 君を想うと身を斬られる程の想いが、僕に取って君と出会った最愛の証なのだと気付いた時 心の中でフッと暖かい蕾が芽吹いたように感じた ねぇ、君は僕と出会った事を後悔していませんか? 君は何も答えないまま僕の全身に降り積もる…。 一瞬でいい君に触れる事が出来たなら 君の髪をそっと撫でるだろう、僕が「綺麗だね」と言ったその髪を… 「ありがとう」と笑ったあの笑顔がもう一度見たいから。
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