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耳を叩く車の走行音。
星降る真夜中の都市で、俺はアクセルを踏み込む。
「右ぃ!右ぃぃぃいいいいいいい!!」
「うるさい!分かってる!!」
助手席で、自分の体を縛るシートベルトを握り絞めた筋肉馬鹿が悲鳴をあげる。
ハンドルを限界まで左に切ると、アスファルトを噛むタイヤが滑りながら耳障りな不協和音を奏でた。
車体を揺らし、中央分離帯として植えられた垣根を乗り越え、対向車線に躍り出る。
ルームミラーを覗くと、右側から突進を仕掛けようとしていたパトカーが垣根に引っかかりオモチャの車みたく宙を舞っていた。
一台脱落、と。
「前マエまえぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」
「わっ!こら!離れろ馬鹿!」
助手席から身を乗り出した馬鹿が俺にしがみ付く。
尋常じゃない力で掴まれた腕が引っ張られ、ハンドルが勝手に右回転。
警笛を鳴らす対向車の前に自ら飛び出す。
ヤバッ、死ぬっ。
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