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女の、ヘリでトンネルに突っ込めという、無理難題を操縦者に命令している声が拡声器から漏れ、トンネルに反響する。
あとは、いくつか用意しておいた逃走経路の一つであるこのトンネルに用意しておいた着替えで変装を済ませ、車を乗り捨てて従業員用の通路から脱出して別の車で逃げるだけ。
横でまだ、見えないヘリに手を振ってる馬鹿のおかげで、逃げるのに手間取ったが、今回も楽な仕事だった。
窓から戻り、助手席に座り直した相棒のオレンジの髪が揺れる。
無駄にデカイ図体に、筋肉隆々の肉体。
そんな厳つい体に似合わない人懐っこい顔で無邪気に笑う馬鹿が、不幸にもこの俺様の相棒だった。
ルームミラーの向きを変え、俺の疲れた顔を映す。
眼鏡のレンズ越しに見る青い目は疲労を訴え、朝整えたはずの白い髪は見る影も無く滅茶苦茶になってやがる。
いつ見ても不幸そうな不景気面をした男だな。
皮肉めいた笑みが自然と漏れるが、残念ながら鏡に映った男は間違いなくこの俺様だった。
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