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―…ゴトン…
「ゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!」
―ザシュッ
転がった頭はそのままに、銀狼――少年は3つの体をズタズタにした。
後には血濡れの狼と、原型すらも分からない肉の塊が落ちているだけだった。
自我も何も失った少年は、その4本の足で駆け、小屋の壁を突き破った。
―もう、何故自分が怒っていたのかさえ分からない。
―最初に目に飛び込んできたのは、満月。
久しぶりに出た外の世界は夜だった。
「居たぞ!!…なんだアイツは!?」
「本当にこれがあの異端児か!?」
小屋の周りには吠え声を聞きつけた人々が武器を片手に集まっていた。
「ルオオオオオオオッ!!!!」
銀狼は囲まれたことに苛立ち叫びを上げる。
それに驚いた数人の若者達が矢を放ち、それが銀狼に当たる。
大した衝撃にはならなかったがそれに刺激された銀狼は矢を放った若者達が悲鳴を上げる間もなく飛びかかり喰い殺してしまった。
人々が呆然とする中、少年は人垣をなぎ倒し山頂に続く森に向かって駆け出した。
気付いた人々は槍等を投げて追撃したが、細い槍は弾かれ、大槍を1本刺せただけで捉えることはできなかった。
赤黒く汚れ背に槍を刺した銀狼は、足を止めることなく夜の森の闇の中に溶けていった。
その後、一族は少年を追うために探りの手を出したが、どれだけ探しても、少年が見つかることはなかった。
それでも一族は少年を探し続ける。
檻の中にいた傷だらけのコドモは、檻を壊して自由になった―――。
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