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3月の末―…。東京の朝はまだ少し肌寒かった。
そんな中、1人の少年が早咲きの桜並木の道を小さめのキャリーを引きながら歩いていく。
少年が足を踏み出す度にすれ違った人達が彼を振り返る。
それくらい少年は美形で"特異"な存在だった。
少し裾の長い髪とスッキリとした綺麗な顔立ちに175㎝はあるだろう長身、その長身に見合うスラリと長い足。黒系のセンスのいい服。
そこまでならただの美形の少年だっただろう。
すれ違う人達の目を真っ先に集めたのは、彼の真っ白な髪と赤い目だった。
知っている人は知っている病気、アルビノ。正式な名称は先天性色素欠乏症。
人々にはが彼がその病気のように思えた。
が。
正確には少年の髪は白ではなかった。
闇夜の月を彷彿とさせる
白銀。
その髪を風に靡かせながら少年は歩いていく。
彼の名前は津木科緋煉(ツギシナヒレン)。
15歳。
迷う様子もなく並木道の先に見える城のような建物に向かって歩いていく。
銀の髪が日の光に照らされて様々な色に煌めいていた――。
*
思っていたよりも並木道は長かった。おかげで頭が花弁だらけになっている。
俺はデカ過ぎる校門(城門?)の前に立って"城"を見上げた。
門の柱を見れば
「…<国立イルゼリア魔法学校>…。」
の文字。
これから4年間この学校で過ごすことになる。
…。
…まあ、楓さんもいるしどうにかなるだろう。
意を決して校門の中に足を踏み入れた。
*
―カツーン…カツーン…
春休みで人がいない廊下はよく音が響く。
俺が今向かっているのは理事長室だ。
場所は学校の受付?の人に尋ねたから分かっている。
今日は理事長に挨拶に来たのだが、その人が内線らしき物で何か話していたから多分大丈夫…なハズ。
考えている内に理事長室の前に着いてしまった。
仕方ないので立派な扉をノックした。
「挨拶に来ました。津木科緋煉です。」
「入ってくれ。」
返事は案外早かった。
その言葉に従い、部屋の中に入った。
刹那。
「【グラビディス】」
―ズンッ
俺がいた所の床が大きくヘコんだ。
―…キィン!
「…ほう。それなりに腕はたつようだな」
「…入ってきてすぐにコレはないんじゃないですか?」
「おや。これは失礼。」
ぶつかり合っていたナイフが離される。
なんで机にナイフ常備してあるんだよ。
男がクスクス笑っている一方で、俺は溜め息をついた。
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