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魔力とか、自分にも被害が来そうな物にしか反応のない兄に溜め息が出そうになる。
ふと周りに目をやると、緋煉が倒れたために静まり返っていた教室が軽くパニックになっていた。理由はもちろん突然現れたメルゴレアスだろう。
元凶に目を向け、向け…………いない…(汗)。
慌てて周囲を見回してみると
既に緋煉をメルゴレアスに担がせて、「れっつらどーん★」とか言いながら教室を駆ける白衣がいた。
騒ぐ生徒達をすり抜ける先生とは違って、ついて行くメルゴレアスはなんの遠慮もなく生徒を蹴散らしていく。
うっわ、いたそ……じゃない!!
「ちょっ、先生!!緋煉に何するんですか!?ってか誰!?」
なんだかもう幸せオーラ全開だった先生は一応こっちを見てくれた。
にひひ~。と笑って
「ないしょ~!青木部センセーに聞いてっ!!知り合いだから!
あと青木部先生に『よろしくっ★』って言っといて(笑)!」
「はぁっ!?ちょっ、えーーーっ!!!?」
「よろ~。じゃ★」
―ぱたん
「ちょっとぉおお!!!!」
「おい秀。イロイロと大丈夫か?」
手と膝を突いて落ち込んでいる弟に兄は真面目な顔で聞く。
「閃にそれ言われると僕スッッゴイ落ち込むんだけど。
…ってイロイロって何ちょっと!?」
―ガラッ
「おい手前等何やってんだ?周りから苦情がくるんだが?」
やっとのことで青木部先生が教室に戻ってきたが、教室での騒動に軽く驚いていた。
担任の教師が帰ってきたので生徒達は席に着き始めるが、蹴散らされて気絶した数人はどうしようもないのでそのままである。
「…オイオイ。私がいない間に何が起きたんだ一体。」
「せんせー!」
「なんだ?」
頭を抱えそうな先生に僕は挙手した。
「津木科緋煉君が拉致されました~。」
「っ、誰にだ!?」
"拉致"という言葉に先生が目を剥くが
「"大きな黒い使い魔"連れた緑っぽい黒髪の白衣の人です。」
…。
「………………ああ。
それならこの惨状も説明がつくな。
…そいつは何か言ってなかったか?」
「『よろしくっ★』だそうです。」
「……………はぁ……。」
今度こそ本当に頭を抱えてしまった。
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