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青木部先生はヤクザで理不尽でよく人を簀巻きにして吊すけど、結構な苦労人なのかもしれないとちょっと思ってしまった。
立ち上がって教壇に立った先生の目が死んでいる。
「……仕方ない。
お前等、今日はもう帰っていいぞ。
本当はお前等の自己紹介とかさせようと思ってたんだがな。この有り様じゃ無理だろ。寮に帰るなり買い出しに行くなり好きに過ごせ。
じゃあ終わりだ。気を付けて帰れよ。」
そのまま片手を上げて教室のドアに向かう。
途中で先生は振り返って
「そうだ。倒れてるヤツは知ってるヤツが連れて帰ってやれ。"アレ"に気絶させられても特に害なんてないからな。
…いいか?間違っても保健室には連れてくんじゃねーぞ!」
最後だけ面倒くさそうに眉間にシワを寄せて去っていった。
先生がいなくなった教室に次第に喧騒が帰ってくる。
「…緋煉大丈夫かなあ?」
無意識の内にポツリと言葉が零れていた。
「…お前が心配してもその"緋煉"とか言うヤツは戻ってくるわけじゃないだろう?」
「…そうだけど。」
「…はぁ。
早めに解放されたことだしどっか食いにでも行くか?」
「……うん。」
どこまでもマイペースな閃の言葉に僕は仕方なく頷いた。
*
目を覚まして最初に見たのは真っ白な天井だった。
消毒液の匂い…。ここは保健室か?
体を起こそうとするが四肢が圧迫・固定されていて動きそうになかった。
布っぽい白と鎖が鳴る音がするから多分上級の捕縛術『マルゴラ・チェイン』だろう。
『マルゴラ・チェイン』は基本的に力の強い大型の魔物に使うものだ。しかも対象に対しての外からの魔力しか通さない優れものである。
当然、内からの攻撃は無駄なので、すぐに抵抗することを諦めた。
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