入学式

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「あれ?もう起きたの?」 寝ていたベッドを取り巻いていたカーテンを開けて楓さんが入ってきた。 「……楓さん。俺は何をしたって言うんだ?」 「や~、何もしてないけど会いたかっただけだよ~!」 「…それだけなのに俺はミイラ男…。」 「ゴメンってば~!」 話が噛み合っていない上に全く気持ちの籠もっていない声で謝りつつも術を解いてくれた。 やっと自由になった体を伸ばして肩を鳴らす。 「…気絶させといてなんだけど、まあ…万一ってこともあったしね…。」 「……。」 確かに"アレ"が暴走してしまったら『マルゴラ・チェイン』でも時間稼ぎにしかならない。 「あ。緋煉、背中見せて!」 「…?」 「さっき結構強い呪符使っちゃったから。」 「…ああ。」 納得したので上に着ていた物を脱いでベッドの足元に放る。 外気に触れた背中が少しピリピリした。 「………また広がったみたいだね。」 背中の痣…。 そんなこと言われなくても一番自分がわかってる。 俺の背中には生まれつき赤黒い十字架の痣があった。その赤に由来して名前に"緋"という字がついたのは余談だが。 これは俺が生まれた"一族"の血を強く継いだ者に受け継がれる、所謂先祖帰りの証しだ。白銀の髪もそう。 戦闘時において必要な殆どのものに秀で、治癒力・生命力かま特に優れている。その上長寿で容姿端麗。知能も高い。 十字架はこの驚異的な程に優れた治癒力と生命力に関係していた。 怪我等で体に傷を負うと跡を残さずに完治する代わりに、背中の十字架を取り巻くように蔦や葉のような痣が増えていく。 その進行は微々たるものだが、痣が全身に周りきったその後に待っているのは死――。 痣が増える原因はもう1つあるがどちらも生命力を削るため、いくら怪我をしなくても常人の3倍はある寿命を半分は無駄にしてしまう。 7年前に使えなかった力を開花させてからはその痣は目に見えて増えていた。 「赤くはなってないね。」 「気にするなら強いの貼るなよ。」 十字架の痣の部分は他に比べて魔力耐性的に弱く、先祖帰り唯一の弱点でもあった。 「ゴメンってば! それより、はいこれ。」 「?」 後ろから渡されたものは、太い鎖のペンダントだった。銀の輪の端には翡翠色で菱形のプレートが1つ。透かしてみると複雑な青の魔法陣が輝いていた。
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