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けれど、世界は争いのせいで荒れ果てていました。
彼は世界復興のため、眠っていた神々を起こし尽力しました。
世界は徐々に元の美しい姿を取り戻していきました。
しかし。
戻ってきた平和はそう長く続くことはなく、世界には新たに<始まりの樹>を狙う者達が現れるようになりました。
2回目になるこの事態に、善良な人々も神々も困り果てました。
彼は思いました。
「やはり"力"は止めるべきで、その上で同じ人間の中で上に立って止める者が必要だ」と。
そこで彼は人を探しました。
力を貸してくれる人間を。
何度も探しましたが、人探しは進みませんでした。
探すことに限界を感じ始めていた彼の下に1人の人間が現れました。
人間は言いました。
「私を使って下さい。」
人間はウルゼアを信仰する孤児でした。
彼は迷いました。
「彼に責を負わせてもいいのか」と。
悩む彼を見て人間は言いました。
「全てをあなたが背負わなくてもいいのですよ。
ウルゼア様にも他の方々にも、私にも少しずつ分けてくださればいいのです。
あなたを慕う方々は皆心配されているですから。」
彼は周りを見ました。
人間の言う通り、周りには自分を心配する者達の姿がありました。
そこで彼は気付きました。
「周りが見えていなかったのだ」と。
「本当にいいのか?」
彼はそう尋ねました。
人間の答えは既に決まっていました。
彼はウルゼアの血を一滴人間に与えました。
その血を飲んだ人間の体に力が漲り、狼に姿を変えました。
ウルゼアに似た白銀の狼。
ウルゼアとは違う太陽のような黄金色の瞳。
それが今の人間の姿でした。
人間は神々の手足となり、世界に平和をもたらしました。
争いの収束と共に神様は<始まりの樹>の"力"の放出を止めました。
少しの間大地は荒れましたが、彼は他の神々と協力し、環境を戻していきました。
"力"の供給を止めた<始まりの樹>は、その幹の中に"力"を貯え、さらに巨大な霊樹へと姿を変えました。
争いを収束させた人間は子孫を残し、子孫達と共に、"霊樹"<始まりの樹>を狙う強欲者や大罪を犯した悪人達を裁き、<創世主>や霊樹を他の神々と共に守っていきました。
いつしか人間の一族は<神の一族>と呼ばれるようになっていきました。
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