第二章 雪女の戦略

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   源治は齢八十を越えて尚、進化をし続ける日本の元気なご老人である。  その歳にして、パソコンや携帯電話の最新機種を使いこなす。  妖怪やオカルトなどとは対極の、デジタル仕様の人間なのである。  だから、事務所も近代的なオフィスのようだ。  当然の如く、木造建築の道場には似つかわしくない一室である。 「洋ちゃん、それで結局は何を探してるの?」 「さぁ……」 「さぁって、宛もなく何かを探してるの?」 「まぁ、そうなるのかな」 「うぅ、何か洋ちゃんらしくないよ」  拗ねる杏菜を尻目に、洋輔は事務机の引き出しの奥から、古びた皮張りの手帳を発見していた。  デジタル仕様の源治には、似つかわしくないアナログな一品。  恐らく数十年前の代物だ。  これを使っていた当時は、携帯は当然存在していなかったであろうし、パソコンも一般家庭には普及していなかったであろう。 「洋ちゃん、そう言うのは見ない方が良くない?」 「分かってるよ……」  そう言いながら洋輔は、無造作に手帳を開いた。
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