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源治は齢八十を越えて尚、進化をし続ける日本の元気なご老人である。
その歳にして、パソコンや携帯電話の最新機種を使いこなす。
妖怪やオカルトなどとは対極の、デジタル仕様の人間なのである。
だから、事務所も近代的なオフィスのようだ。
当然の如く、木造建築の道場には似つかわしくない一室である。
「洋ちゃん、それで結局は何を探してるの?」
「さぁ……」
「さぁって、宛もなく何かを探してるの?」
「まぁ、そうなるのかな」
「うぅ、何か洋ちゃんらしくないよ」
拗ねる杏菜を尻目に、洋輔は事務机の引き出しの奥から、古びた皮張りの手帳を発見していた。
デジタル仕様の源治には、似つかわしくないアナログな一品。
恐らく数十年前の代物だ。
これを使っていた当時は、携帯は当然存在していなかったであろうし、パソコンも一般家庭には普及していなかったであろう。
「洋ちゃん、そう言うのは見ない方が良くない?」
「分かってるよ……」
そう言いながら洋輔は、無造作に手帳を開いた。
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