第二章 雪女の戦略

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         弍    天守閣に雪女が舞い戻る。  雪を纏った小さなつむじ風が、天守閣内の社の傍らに出現したかと思ったら、その雪が次第に集まり人の形をなした。  天守閣の室温が、五度ほど瞬間で下がる。  雪女の実体が、完全にその場で形作られた。  天守閣に大妖の側近の姿が無いのは、雪女がその時を狙って戻ったからだ。  だが、雪女の表情は曇っている。  先程出ていく時と比べると、別の個体のようにさえ見えてしまう。 「どうやら、失敗のようだな」 「アタイとした事が、折原の兄ちゃんを甘く見ちまったようだね」 「本当に、甘く見たのか?」 「あぁ、ひ弱な人間かと思ったけども、あの兄ちゃんとんだ曲者だったねぇ」 「軽口のわりに、苦虫を噛み潰したような顔をしてるではないか」 「はんっ、うるさいね」  雪女は、纏っている冷気を強めた。  だからと言って、大妖の社には何ら影響は無い。  それを、つまらなそうに見詰める雪女。  どこかで大妖を仕留めて、この城を奪う気があったのだろう。
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