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妖気の絶対量からして大妖にかなう筈もなく、あっさりと雪女は冷気を引っ込めた。
そして、天守閣の窓際に腰かける。
「いい、城だねぇ」
「未完の城だ、良いも悪いも無かろう」
「そうかねぇ、妖界を一望する天下取りの城じゃないか」
「何が言いたい?」
「アタイに、城をおくれよ」
雪女は、大妖を封じた社に向き直る。
窓枠に腰掛け肩幅以上に足を開くと、右肘を右膝の上に乗せて体重をかけている。
その姿は、大妖に啖呵を切るつもりのようだ。
「折原の兄ちゃんを殺ったら、この城をアタイに褒美としておくれ」
「これは、我が城ぞ」
「この城だけで、満足するタマじゃないだろ?」
雪女は、捲し立てる。
大妖はこんな城の主で満足などせず、社を出たら妖界のみならず人間界まで征服するつもりだろうと。
ならば、この城にこだわらない筈。
「どうだい。くれるのか、くれないのかい?」
「小僧の命の褒美は、別に要求しておっただろう」
「アタイは、強欲なんだよ」
雪女は、ほくそ笑む。
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