第二章 雪女の戦略

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   社に封じられている大妖が、その表情を直接見る事は出来ない。  だが、大妖はその表情を感じ取る。  表情を感じ取った大妖が、どのような表情を浮かべたのか雪女は見る事が出来ない。  顔を付き合わせての心理戦では無いが、雪女からすると相手の様子が分からないだけに、駆け引きが後手に回る。  だからこその虚勢。 「まぁ、やっても構わんが、あの小僧一人にこの城ではつり合わんだろう」 「足りないってえのかい?」 「あぁ、折原の小僧の命。九条の小娘二人の命。それに、極点の結界破りでこの城をくれてやろう」  極点の結界。  九条 神奈の暮らす巨木が取り囲む、小さな小屋を守っている結界の事である。  これまで数多の妖が、なし得なかった結界破りをも条件に加えたのだ。  雪女も、それを知っている。 「どうあっても、この城を渡したくないのかい?」 「お主に我の力を与えたのだぞ、その程度の事はやってのける筈だぞ」  大妖は、雪女を挑発する。  まるで、結界破りの能力すら与えたと言わんばかりだ。
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