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社に封じられている大妖が、その表情を直接見る事は出来ない。
だが、大妖はその表情を感じ取る。
表情を感じ取った大妖が、どのような表情を浮かべたのか雪女は見る事が出来ない。
顔を付き合わせての心理戦では無いが、雪女からすると相手の様子が分からないだけに、駆け引きが後手に回る。
だからこその虚勢。
「まぁ、やっても構わんが、あの小僧一人にこの城ではつり合わんだろう」
「足りないってえのかい?」
「あぁ、折原の小僧の命。九条の小娘二人の命。それに、極点の結界破りでこの城をくれてやろう」
極点の結界。
九条 神奈の暮らす巨木が取り囲む、小さな小屋を守っている結界の事である。
これまで数多の妖が、なし得なかった結界破りをも条件に加えたのだ。
雪女も、それを知っている。
「どうあっても、この城を渡したくないのかい?」
「お主に我の力を与えたのだぞ、その程度の事はやってのける筈だぞ」
大妖は、雪女を挑発する。
まるで、結界破りの能力すら与えたと言わんばかりだ。
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