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洋輔には、江戸時代の遊女のように見えた。
無論、狐沼で洋輔を襲ってきた氷女とは違って、人間と代わらない姿には今まで戦った妖とは異質だった。
「雲外鏡、これが……」
『あぁ、大妖の妖気を受けた雪女なのだが、今回は様子が違っているんじゃよ』
「様子が違うって?」
『大妖の妖気に、完全には支配されておらんようじゃ』
雲外鏡は、その雪女について説明する。
通常、妖が大妖の妖気を受けた場合は意識を完全に失い、その狂暴性を膨らませて攻撃的になる。
だが、雪女は狂暴性を膨らませているものの、意識は雪女の元々の状態に限り無く近いようだと。
「どうして、そんな?」
『さぁな、あの城で起きた事はワシには見えんからな』
その時、地面を揺るがす震動が起きる。
それは、巨大な隕石が落下したような衝撃だったが、その震動は短時間で止んだ。
それでも猫又は、部屋の隅で小さな寝息を立てて微動だにしない。
「まさか、雪女の攻撃?」
「いえ、洋輔さま。これはおそらく、あの妖の仕業でしょう」
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