287人が本棚に入れています
本棚に追加
神奈は、冷ややかにそれを否定した。
やがて別の震動が、断続的に小屋の周囲を回ると中に入ってくる。
それは、巨漢の鬼であった。
小屋の屋根を修理し、それを終えると飛び降りてそれを確認してから、中に入ってきたのだ。
「おぉ、折原殿」
「あぁ、君だったのか」
「この小屋の屋根を、少しばかり修理しててな」
「そうだったんだ」
「あぁ、何だったら小屋を大きな屋敷に建て直しても良いと思ってる」
神奈は、それを断固として拒否した。
三百年も暮らした小屋であり、幻幽斎との思い出も残っている。
結界内にあって老朽化しないのだから、建て直す必要など無いのであった。
本来なら、修理すら不要だ。
「そう言えば、ずっと気になった事があるんだけど」
「何で御座いましょう、洋輔さま」
「うん、妖達に名前は無いのかって事」
「名前で、御座いますか?」
「うん。河童や鎌鼬とかって妖の種族の名称で呼んでるけど、個々の妖に名前は無いのかなって」
洋輔は、それを不思議に感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!