第二章 雪女の戦略

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   神奈は、冷ややかにそれを否定した。  やがて別の震動が、断続的に小屋の周囲を回ると中に入ってくる。  それは、巨漢の鬼であった。  小屋の屋根を修理し、それを終えると飛び降りてそれを確認してから、中に入ってきたのだ。 「おぉ、折原殿」 「あぁ、君だったのか」 「この小屋の屋根を、少しばかり修理しててな」 「そうだったんだ」 「あぁ、何だったら小屋を大きな屋敷に建て直しても良いと思ってる」  神奈は、それを断固として拒否した。  三百年も暮らした小屋であり、幻幽斎との思い出も残っている。  結界内にあって老朽化しないのだから、建て直す必要など無いのであった。  本来なら、修理すら不要だ。 「そう言えば、ずっと気になった事があるんだけど」 「何で御座いましょう、洋輔さま」 「うん、妖達に名前は無いのかって事」 「名前で、御座いますか?」 「うん。河童や鎌鼬とかって妖の種族の名称で呼んでるけど、個々の妖に名前は無いのかなって」  洋輔は、それを不思議に感じていた。
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