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妖の名前。
河童や鎌鼬の時にはそれぞれが単体で、種族の名称を名前のように使っていたが、鬼の時には数十体と鬼がいながらも、名前で呼び合っている様子は無かった。
人間の洋輔にしたら、それを不自然と感じずにはいられない。
「妖に、名前は御座いません」
「無いの?」
「えぇ、特には御座いません」
鬼が、そこに口を挟む。
隠れ里の鬼達は、それぞれを呼んだりはせず言葉で呼び掛けなくても、通じているので名前が必要ないのだと言う。
口から発せられる言葉には、同族の場合では補助的な役割でしかない。
神奈や他の種族との会話には言葉を使う。
無論、言葉を使えない種族もいる。
「そうかぁ、でも僕としたら不便だな」
「洋輔さま、不便で御座いますか?」
「うん、仲間に鬼が複数いるから名前は必要かなって」
目の前の鬼と、金棒に封じ込めた鬼。どちらも鬼と呼ぶのに、呼び分ける方法が無いのだ。
神奈は、考え込む。
彼女自身。妖に名前は無くとも、不便だと思った事は一度も無い。
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