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だが、主君である洋輔の希望である。
「それでは、洋輔さま。洋輔さまご自身が、従者の妖に名付けたらいかがで御座いましょう」
「えっ、僕が?」
「左様で御座います」
洋輔としては、俗称なりあだ名なり正式な名前など無くても、それに代わる物が出てくればと思って聞いた事。
それを、名付けろと言われて困った。
洋輔の経験で、何かに名付けた事など一度もない。
「洋輔殿。是非とも、そうしてくれ」
「鬼の名前……」
妖怪などの伝承などで、鬼に名前が付けられているケースはいくつかある。
酒天童子や茨木童子。
これらは有名な鬼の名前であるが、これをそのまま引用するのは気が引ける。
赤鬼や青鬼、餓鬼などは鬼の分類する名称だ。
「太郎丸、次郎丸なんてどうかな? 金棒に封じた鬼の方は太郎丸で、君は次郎丸」
「次郎丸……」
鬼は、自分に付けられた名前をなぞるように呟いた。
神奈は、その字面でも思い浮かべるように、視線を上に向けながら考える。
小屋の中に、沈黙が流れた。
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