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モスコミュールを飲み終え窓越しに外を見ると、辺りを闇が覆っていた。
部屋に忍び込む風には、微かにツンとした潮の香りが混じっている。もう十一月も終わりだから、さぞかし冷たい風なのだろう。
和人はため息をつくと、カウンター側を向き直る。
「マスター、ソルティドッグ」
「かしこまりました」
マスターが、棚からグラスを取り出しながら答えた。
店内にはテーブルが一つと赤いソファー。そして五人掛けのカウンター。十人も入れば満席になるだろう。しかし、客がいないのでがらんとしている。
マスターが出来上がったカクテルをカウンターに置いたとき、ドアが開き、取り付けられているベルが鳴った。
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