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入ってきたのは二十歳くらいの女性。
背丈は百六十センチ前後。髪はセミロングのストレート。束ねていないので、髪質の良さが手に取るようにわかる。
淡いクリーム色のブラウスの上に、絹でできた浅黄色の上品なカーディガンを羽織っていた。
濃紺のスカートが上着の淡い色合いとマッチしているからだろうか、肌の白さが浮き立って見える。
女性は店内を一通り見渡すと、和人から一番離れたカウンター席に腰を下ろした。
「何にいたしましょう」
マスターは、細面の女性の瞳を流し見ると注文を訊いた。
「オールドパーをロックで」
女性は、真珠を転がしたような声てそう言った。しかし、その声の奥底には押し殺したような悲壮感が漂っている。
「かしこまりました」
マスターはグラスにブレイクアイスを放り込むと、棚からウィスキーを取り出して注いだ。
女性は目の前に置かれたウィスキーをしばらく眺めていたが、両手でグラスを持ち上げるとそれを一気に飲み干す。
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