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女性の視線が和人のそれと一瞬重なり、その後すぐにカウンターの奥に向けられた。
「私、未流といいます。あなた、この辺の人?」
「いえ。ぼくの家はここから一駅先です。今日はどうしてここへ?」
「難しい質問ね」
「そうですか。ぼくもきっとそうだと思っていました。その……あなたの様子が少し気にかかったので」
「ありがとう。私ね。っていうか、私にはどうやら未来がなさそうなの」
「未来がない?」
「そう。私は未来を持っていない。でも思い出なら有り余るほどもっているわ」
未流はウィスキーを一口だけ啜ってグラスを置く。そして長い長い話を始めた。
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