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未流は、舟入中央病院の入り口ゲートを抜けると、受付前のエントランスに向かう。
縦に大きく開かれた病院の窓一面を、暗い雨雲が覆い尽くしている。
広也はエントランスの長いすに柚木と二人で座っていた。
「こんにちは」
未流の声は静かな病院の空間に吸い込まれるような気分になった。
「あ。星夜は少し遅れるみたい」と柚木が言い腰を浮かせて体をずらして未流が座るスペースを空けた。
「そうなんだ」
未流は二人の前で軽く会釈し、柚木の隣に腰を下ろした。
「未流。本当のことを言うね」
突然柚木が未流の眼鏡を覗き込んで言う。
「何ですか?」
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